|
1.中核的なトラウマ記憶を過去の1コマの映像に変換する
解離を生じさせる原因となった中核的なトラウマ記憶を思い出すことは、参加者にとってもっとも必要なことであるとともに、最大の苦痛をもたらすものでもあります。参加者の苦痛を最小限に抑えるために曝露は段階的に行います。
DIDにおける曝露は、PTSDの長時間曝露の修正手順を用います。これはオーバーエンゲージメント※3を予防するためと、参加者の治療への取り組みを容易にするためです。大まかな手順は以下の通りです。
音読法 → 開眼・過去陳述形 → 閉眼・現在陳述形 (組み合わせは他にもあります)
| ※3 オーバーエンゲージメント・・・トラウマ記憶に圧倒されて解離やフラッシュバックなどが生じてしまうこと。 |
2.留意点
治療者は、アンダー・エンゲージメント※4を避けるために、日常でのトラウマ記憶の再燃とは状況が異なること(安全の保証)、自分の感情や感覚に焦点を当てること(再教示)を分かってもらうよう促します。記憶想起の流れを中断させないように、教示は短く簡潔に(例:何が見えていますか?
etc.)、しかし強化的な働きかけ(例:その調子です etc.)を心がけねばなりません。
| ※4 アンダーエンゲージメント・・・回避にってトラウマ記憶の想起が十分に行われない状態。 |
治療者は、5分おきに主観的不安度※5がどのように変化しているか訊ねます。これには、不安の低下を言語的にフィードバックする働きがあり、参加者を落ち着かせ、うまくいっているという自己効力感を高め、治療者には曝露過程がどのように進んでいるかを確認できる利点があります。
| ※5 主観的不安度・・・まったく不安なしを0、今にもパニックになりそうなほど不安な状態を100として、0〜100の間で、不安(恐怖)度を自己評定したもの。 |
レベル6は、対DID治療としては最終のレベルになります。しかしながら、このレベルに到達するまでには非常に長い時間がかかります。そして何よりも、このレベルに辿り着くには、レベル1〜5までに学んだ様々な対処スキルを、参加者がしっかりと身につけていることがもっとも必要とされます。
行動療法でもっとも望まれる効用の1つは、治療者の施術にあるのではなく、参加者自らが行動的手法(自他の行動分析、ストレス対処技能)を学び、自らが成長していくところ(エンパワメント)にあるからです。
レベル6を通じて、参加者は過去の記憶に翻弄されることはなくなり、自己効力感が高まります。そして、生々しく迫ってきた自分を圧倒するような過去の記憶は、アルバムの中の1コマに静かに姿を変えていくことになります。嫌な出来事であったことを参加者は素直に認めることができますが、それを思い出すことによってひどく混乱することはなくなります。

|