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解離性同一性障害(DID:Dissociative Identity Disoder)


各項目をクリックするとジャンプします。
  1. 解離とは?
  2. 同一性とは?
  3. よくある誤解
  4. 疫学
  5. 原因
  6. 診断
  7. 症状と特徴
  8. 治療の一般原則

9. 解離性同一性障害の行動療法

 

はじめに

解離性同一性障害(DID:Dissociative Identity Disorder)は、DSM‐W(精神疾患の診断・統計マニュアル1994)以降の診断名で、一般的にはICD‐10(国際疾病分類 精神および行動の障害 1992)の多重人格障害(MPD:Multiple Personality Disorder)が広く知られています。

このように多重人格障害とも呼ばれることから、人格障害(境界性人格障害 etc.)と混同されることがありますが、人格障害ではなく、解離性障害(解離性健忘、解離性とん走 etc.)の1つです。誤解を避ける点からも、多重人格障害(MPD)ではなく、「解離性同一性障害(DID)」の呼称を使うことが好ましいと思われます。

DIDは、一人の人間に、明らかに異なると判断される2人以上の人格が存在する病態をいいます。それぞれの人格は独自の行動パターンと記憶をもっていて、各々の人格状態に切り替わったときには、他の人格の考えたりしたりしたことを思い出すことができません。

DIDは幼少期の催眠感受性(被暗示性)の高さを基盤に、度重なる身体的あるいは性的虐待等の外傷体験を通じて形成されます。通常、DIDでは複数の人格状態が確認されます。新たに生み出された人格(交代人格)は、基本人格(出生時にもっている人格)では耐え切れない悲しみや苦しみを引き受けるサバイバル機能、基本人格が自分心の中にあることを許すことができない憎しみ、敵意、奔放さ、甘えなどの感情を代弁する情緒的な回避機能を担っています。

したがって必然的に、交代人格は基本人格にはない性格を備え、基本人格がもてない甘えの上手さや、激しい攻撃性や憎悪、自傷・自殺衝動などをもっていることが多くなります。本来は統合されて1つにまとまっているはずの複雑な欲求や感情を、バラバラに分けて、それぞれの専門担当の人格に振り分けることで基本人格の負担を軽減し、その人に危険すぎる状況と精神的な崩壊を回避する手段がDIDなのです。

このような状態は、爆弾処理グループが「爆弾処理」行っている状態に例えると理解しやすいかもしれません。

爆弾処理に直接手を下すのは1人で十分です。グループ(統合された1つの人格)すべてが傷つくよりも、処理要員の1人(交代人格の1つ)だけが傷つくほうが痛手は少ないといえるでしょう。また、処理場面は隔離されていますから、爆弾処理が仮に失敗しても苦しむのは担当者だけで、他のグループメンバーは、担当者が傷ついても、そのときの様子を見ることはありません。

このようにDIDは、小さな子供が、虐待などの耐え難く避けがたい苦しみや困難を、ダメージを最小限に抑えて生き延びるためのサバイバル術だと考えられるのです。



1.解離とは?
解離とは、耐えがたい苦痛による精神崩壊を防ぐために、痛みを感じなくなったリ、忌々しい記憶やそのときに感じた生々しい感情を自分から切り離すことによって苦痛から逃れる心理的なメカニズムです。解離状態とは、記憶、意識、身体感覚、時間感覚など、本来ならばうまく統合されている精神機能が統一されていない状態といえます。

解離には病的なものと、日常的で健康な人にも起こるものとがあります。解離状態は病的か否かの二者択一的な判断ができるものばかりではなく、病的で治療を要する重篤な状態から、誰にでも起きる日常的なものまでを含めた連続的な精神状態の広がりを指しています。

【日常的な解離の例】

  • 空想にふける
  • 物事に集中していて周囲で起きていることに気づかない
  • ぼうっとしていていつの間にか時間が経っている
  • 映画館で気がついたらおポップコーンの入れ物が空になっている
  • 考え事しながら歩いていて自分がどこをどう歩いてきたか詳しく思い出せない

【病的な解離の例】

  • 数日間(数時間あるいは数ヶ月)の記憶がポッカリ空白になっている
  • 痛みや気分不快をまったく(ほとんど)感じない
  • 周囲の人や物が薄いベールで覆われたように見える
  • 確かに自分がしたと思われることについて記憶がない
  • 周囲の出来事が自分とは無関係に進んでいるように感じられる
  • 生き生きとした自分の感情の流れを感じることができない
  • まるで別人のようだったと他人に知らされるが、そのような覚えがない
  • 気がついたら、まったく見知らぬ場所(あるいは見知らぬ人と一緒)にいた
  • 気がついたら大けがをしていたが記憶がない



2.同一性とは?
同一性とは、その人が考え、感じ、行動する際の統合感であり、一つのまとまりをもった“確かに自分は自分自身である”という確信をいいます。このような同一性は、通常時間や場所が変わっても変化することがありません。

しかし、DIDの人は、この同一性が失われて、多くの場合2人以上の自分(人格)をもっています。それぞれの人格は、自分が主役になった(人格交代した)ときに基本人格(出生時にもっていた本来の人格)とは異なる独自の行動パターンで振舞うため、周囲からはまったく違った人物のように見えます。

しかし、多くの場合、本人(基本人格)には、人格交代時の他の人格(交代人格)が、何を考え、どのように行動するのかはわかりません。自分にいくつもの人格があることに気づかないことが多いのです。

基本人格以外の人格は、名前、性別、年齢などが戸籍上と異なることがあります。

3.よくある誤解
DIDについては、テレビ、雑誌、映画、インターネットなどを通じてしばしば誤解を招く情報が流れ、その誤解が定着してしまっている節が見受けられます。この障害の人格交代の現象が非常にセンセーショナルで人々の興味を強く惹きつけることから、虐待等の深刻な原因論がなおざりにされ、興味本位の取り上げ方がなされていることが、DIDに関する誤った知識を広める原因になっていることはたいへん不幸なことです。

誤解1)性格の多面性との混同

「人には多かれ少なかれ二重人格的なところがある」という人間の性格の多面性を強調する主張がこの種の誤解を典型的に示しています。性格の多面性とは、TPOに応じて、口調や応対の仕方に変化があることを指しますが、DIDにおける人格交代は、口調や態度の変化だけに留まりません。

各人格間の記憶は、多くの場合完全に切り離されており、その隔離の結果は記憶の喪失という典型的な形をとります。人は確かに多面的な生き物といえますが、その多面性は通常1人の人間の記憶として統一されているものであり、たとえば社長に平身低頭していたときの記憶を、帰宅して妻の前で関白ぶりを披露しているときの自分が思い出せないということはありません。

DIDでは、人格ごとの記憶は独立しており、人格Aから人格Bに切り替わったときに、人格Bが人格Aの考えたことやしたことを思い出すことは通常できません。また、自分はどんなことをしていても自分に変わりないという同一性がありませんから、“性格に多面性がある”と感じることはできないのです。DIDの人の目には、交代人格がしたことは他人がしたことのように映ります。

誤解2)解離性同一性障害(多重人格障害)は演技あるいは医原病

誤解3)解離性同一性障害(DID)=境界性人格障害(BPD)

誤解4)解離性障害=解離性同一性障害


4.疫学
DIDの有病率は、研究や報告によって様々ですが、一般精神科病院の入院患者の0.5〜2%が解離性同一性障害の診断基準を満たし、全精神科患者の5%が同障害に相当するという報告があります。

女性に圧倒的に多い(90%以上)障害といわれています。しかしこれには、DIDの男性は、犯罪を起こしたりして刑事上の問題となり、診断が遅れたり、治療受ける機会が限られてしまうことにも関係があると考えられています。

多くの場合、障害が明らかになるのは思春期以降10代〜20代ですが、受診年齢の平均は30歳前後です。DIDと診断されることはあまりありませんが、発症時期は9歳以前の幼少期だと考えられています。


5.原因

DIDの原因については、一般的に、1)外傷体験、2)解離能力(催眠感受性)、3)一定の環境要因、4)外的な援助の欠如の4つが指摘されています。


  1. DIDを抱える人のほとんどは、子どものころの身体的・性的な虐待などの外傷体験をもっていることが指摘されています。外傷体験は直接体験だけに留まらず、近親者や友人との死別、あるいは事故の惨状やその犠牲者を目撃することも含まれます。

  2. 子どもは大人に比べて高い催眠感受性(解離能力)をもっています。幼少期に定常的に外傷体験(虐待etc.)にさらされている子どもは、「これは自分に起こっている出来事ではない」「何もなかった」「痛くない」と自己暗示(自己催眠)をかけることで、避けられない身体的な苦痛を回避しようとします。このような自己暗示とそれによる解離の反復(解離トレーニング)が、容易に解離する神経生理学的な状態を形成し、その傾向が成人期に持ち越されてDIDの基礎になると言われています。

  3. 子どもが外傷体験を耐え忍ぶ構図には、彼らを取り巻く一般的な環境要因が関係しています。たとえば、子どもは社会的にも生物学的にも無力ですから、親の庇護なしに生きていくことができません。また子ども自身も親を頼らずに生きていけないことを感じ取っているものです。こうした状況が足かせとなり、子どもが親や周囲の大人との関係性を断ち切れない環境構造が解離をより促進させていると考えられます。

  4. 子どもは社会的な知識や技能が十分でないため、外部に救済を求めたり、解離以外の方法で事態に対処することができません。虐待の行為者が法律上の保護者ということも多く、本来なら救いの手を伸ばしてくれるはずの両親、兄弟、学校の先生、親戚、隣人たちの援助を得にくいことが解離を抑制できない要因の1つになっています。



6.診断
DIDと明確な診断がなされるまでには、通常6〜7年かかるといわれています。これは、治DIDの療経験者が比較的少なく、DIDが多様な精神症状(幻聴、人格の急速交代、不安症状、対人関係の不安定さ)を併せもっているため、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、境界性人格障害、社会不安障害などと誤診されやすいためです。

DSM‐WによるDIDの診断基準は次のようになっています。

300.14 解離性同一性障害の診断基準

  1. 2つまたはそれ以上の、はっきりと他と区別される同一性または人格状態の存在(その各々は、環境および自己に対して知覚し、かかわり、思考する比較的持続する独自の様式を持っている)。

  2. これらの同 一性または人格状態の少なくとも2つが、反復的に患者の行動を統制する。

  3. 重要な個人的情報の想起が不 能であり、ふつうの物忘れで説明できないほど強い。

  4. この障害は、物質(例:アルコール中毒時のブラックアウトまたは混乱した行動)または他の一般身体疾患(例:複H. 雑部分発作)の直接的な生理学的作用によるものではない。

    注:子供の場合、その症状が、想像上の遊び仲間または他の空想的遊びに由来するものではない。
「DSM-W 精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院(1996)


DIDと診断されるためには、少なくとも2つの明らかに異なる人格状態が確認される必要があります。しかし実際には、明確に2つ以上の人格が認められる状態から人格の独立性があいまいな状態まで、さまざまな病態が存在すると考えられます(解離スペクトラム)。

人格交代は、他の病気として治療している最中に明らかになってくることも多いのですが、この際に、DIDの症例に不慣れな治療者であると、急速交代人格型の双極性障害と混同されたり、また幻聴・幻視などの症状から統合失調症と誤診されたりします。また、神経学的障害の中では、複雑部分てんかんが、もっともDIDの症状に類似しているので注意を要します。


間違われやすい障害の例
診断名 DIDとの相違点
統合失調症
自分が自分以外の人間であると信じる点、あるいはそこにはいない人物の声が聞こえると述べる点で、統合失調症の幻覚・妄想状態と混同される恐れがある。
しかし、統合失調症では、現実見当を欠いた妄想(例:自分は天皇だ etc)、思考障害(話の筋道が通っていない)、慢性的な社会的荒廃が見られるのに対し、DIDではそのようなことは認められない。

躁うつ病
急速に交代する躁状態とうつ状態が、DIDの人格交代と混同される恐れがある。しかし、躁うつ病の急速交代が感情の劇的な変化に過ぎず、記憶、意識などが一貫しているのに対し、DIDでは、明らかに独自の記憶・意識を有する別人格への交代が認められる。

境界性人格障害
DIDの人格交代が、境界性人格障害の気分の変調のしやすさ、自己像の歪み、他者との関係性の揺れやすさなどの問題に過ぎないとの考えられてしまう恐れがある。
境界性人格障害は気分の変動が激しく、たとえば、ある人を過剰に賞賛したかと思うと、次の日には相手を罵倒し徹底的に非難するというような対人関係に揺れやすい特徴をもつが、相手への評価が変動するのであり、本人の同一性に変化は見られない。つまり、異なる2人の人間(人格)が実在するとは感じていない。



DSM‐W以降では、上の明確な人格交代の条件に加えて、診断に際して解離性の健忘を伴うことが必須とされています。解離性の健忘は、DIDを含めた解離性障害(解離性健忘、解離性とん走、解離性同一性障害などの総称)に共通して見られる症状です。

健忘とは、過去の出来事を思い出せないことです。

解離性の健忘が認知症の健忘と異なる点は、新しく記憶する力は保たれている点にあります。つまり、認知症では今朝、朝ごはんを食べたかどうかも忘れてしまいますが、解離性の健忘ではそのような一般情報の記憶には問題はなく、健忘の範囲が、その人の人格的な一貫性に関わる部分および過去の外傷体験と、その体験を掘り起こされるような近々の体験に集中している点に特徴があります。


解離性の健忘を確認するため9つの質問
  1. ブラックアウト・時間喪失体験
    「自分が時間感覚を失っていると感じることがありませんか?」
    「頭の中が真っ黒くなって何も思い出せないということがありませんか?」

  2. 自分では思いだせない行動の報告
    「他の人から、あなたが自分でしたり言ったりしたことがないと思っていることについて、そういうことをしていたと言われたことはありませんか? 日頃の性格からはずれた行動は? 子どもっぽい行動は? メールフォルダに(確かに自分が送ったとしか思えないが)送った記憶のないメールを見つけたことは?」

  3. 出所の分からない誰かの所有物の出現
    「自分の所有物の中に、見覚えがないものや、自分のものでないものが混ざっていることがありますか? たとえば洋服、道具、買い物かごの中身、レシートは?」

  4. 人間関係の変化に対する困惑
    「自分が見知らぬ原因によって、人間関係が変化したのではないかと気がついたことはありませんか? 自分の記憶がないのに、ある日突然、誰かと親しくなっていたりうまくいかなくなっていたりすることがありませんか?」

  5. とん走エピソード
    「自分の知らぬ間に、見覚えのない場所にいたことがありませんか? 自分が行こうとした場所と違う場所に行っていたということはありませんか? そのような体験があった場合、それが持続した期間はどのくらいですか?」

  6. 能力、習慣、好み、知識に関する普通では考えられない変化
    「あなたの運動能力、芸術的才能、労働の仕方、食べ物の好み、生活習慣などが、自分では説明できない形で変動することがありますか? 自分ではできないと思われることをしたと他人に言われたことはありませんか?」

  7. 生活史の断片化
    「自分の生活の中で記憶が失われていることに気づきませんか? たとえば、結婚や卒業のような重要な記憶を失って残念に思ったことはありませんか? 子供のころの記憶は? 大人になってからの重要な事柄についての記憶は?」

  8. 日常的に続く誤った同 一性に関する体験
    「あなたのぜんぜん知らない人が、向こうはあなたを知っていると近づいてきたことはありませんか? 初めて会ったはずなのに、相手はあなたに以前会ったことがあるというような体験をしたことがありますか? 誰かあなたを違う名前で呼ぶ人がいますか?」

  9. 対人コミュニケーションの中での小さな健忘
    「他人とのコミュニケーションの内容の一部を思い出せないようなことがありますか? たとえば、面接中の会話の全部を覚えていますか? 知り合いとメールで交わした話を覚えていないと指摘されたことがありませんか?」

R.J.Lowenstein(1991)より一部改変。

7.症状と特徴
DIDを見分ける最重要ポイントは、先の診断の項目で記したように、

  1. 少なくとも2つの明らかに異なる人格状態が出現する
  2. 解離性の健忘
この2つです。

DIDは、明らかに異なる2つ以上の人格状態が現れる障害です。各々の人格状態は、大まかには次のように分類されます。

DIDにおける人格の種類と説明

基本人格
(original personality)

オリジナル人格とも呼ばれる。生まれたときの本来の人格。
主人格
(host personality)

ふだん活動している時間が長い人格のこと。基本人格と混同しがちだが、肉体を支配している時間が長い人格状態を指す。

交代人格
(alter personality)

基本人格または主人格以外の人格状態。役割分担が決まっていることが多く、子ども人格、攻撃的な人格、奔放な人格など内容は多彩である。

保護人格
交代人格のうち、すべての人格の力関係や肉体を守る役目をする人格。



交代人格は、基本人格(戸籍上の名前をもつ人格)が対処不能な出来事に遭遇して、その事態を何とか切り抜けようとするときに生まれてきた人格です。したがって、交代人格は、基本人格とは対照的で、基本人格にはない行動パターンを身につけていることが多くなります。

通常、基本人格は、受動的でおとなしく、願望をストレートに表現できない性格であることが多いようです。その基本人格に不足したものを補うために創り出されたのが交代人格ですから、交代人格は、基本人格に比べ、攻撃的であったり、社交的であったり、甘え上手であったり、ときには性的に奔放な性格であったりします。交代人格のうち、もっとも広く認められるのは「子ども人格」で、DID治療の本質は、この子ども人格を成長させることだと述べる治療者や研究者もいます。

それぞれの交代人格は、独立した生活スタイル、好み、行動パターンを持ち、基本人格とは、名前、年齢、性別、人種、癖などが異なることがあります。

DID当事者は、通常それぞれの人格状態にあるときは、別の人格の存在や、別の人格が経験した記憶内容を失っています。しかし中には、ある人格が他の人格とある程度の共通した記憶をもっていたり、他の人格が優勢なときでも共通意識を保ち、他の人格の活動をそばで眺めている場合もあります。ときには、自分以外のたくさんの人格の存在にはっきりと気づいていて、他の人格を、友人、仲間、あるいは敵対者として感じていることもあります。ある女性は、次のように語ってくれました。


「毎朝会社に行くのは、エミコというキャリア志向の女性です。最近少し疲れているようです。さっき帰ってきましたが、鞄を投げ出すと消えてしまいました。私とはあまり話したがりません。私は家事担当で何のとりえもない人間なのでツマラナイのだと思います。食べ物の好き嫌いが多く、よく料理に文句をつけますが、給料を持ってきてくれるので私は何も言い返せません。

先日男の人から暴力を受けたのは、派手で遊び好きのマリのせいです。彼女は家には寄り付きません。あちこちを遊びまわっているようです。エミコとは仲が悪く口もききません。好き放題をするので本当は私も困っているのですが、なぜか彼女を責める気にはなりません。マリは根は素直ないい子なのです。私を慕ってくれているようです。

私たちはそれぞれ個性的な人間ですが、体は1つなので大切にしてもらいたいと思っています。仕事で潰れても、危険な目に遭っても、結果的にみんなが困ることになりますから」

(本人の了承を得て掲載しています)



1つの人格から別の人格への交代(スイッチング)は、非常に微妙なものから誰の目から見ても明らかな場合まできわめて多様です。微妙な場合には、話をしたり行動を観察しないと交代したことがわかりませんが、交代の瞬間が、目がうつろになったり、目を閉じたり、首をうなだれたりすることによってはっきり分かるときもあります。人格交代の瞬間に目を大きく見開いたり、顔つきや口調ががらりと変わっていることもしばしばです。

このような人格交代は、生活の中のさまざまな出来事や状況が引き金となって起こります。たとえば、リラックスできる甘えが許されるような状況では子ども人格が登場しやすくなります。逆に、対人的な葛藤場面で、自分が責められたり非難されたりすれば、対人交渉のうまい自己防衛的な人格が現れたりします。基本人格がある意味で特徴が薄いのに対し、交代人格は個性が強く特定の役割を担っている点が特徴的です。

交代人格が、基本人格では対処できない出来事にうまく適応しているように見えることから、むしろ、人格の交代は便利なことのように思えるかもしれません。しかしながら、前述のように、ある交代人格の行為は基本人格(あるいは他の交代人格)のあずかり知らぬところで進行するのであり、後で他人から自分がしたことを知らされたり、自分では気づかぬうちに、他者との交流関係に変化が起きていたりすることは、該当する人格以外には大きなショックをもたらすことがあります。

あるDIDの女性は、あるとき気がつくと見知らぬ男性とホテルのベッドの上にいました。
驚いた女性は、男性を突き飛ばし激しく抵抗しました。つい先ほどまで友好的だった女性の豹変ぶりに怒りを感じた男性は、その女性に激しい暴力を振るいました。女性は、どうにかその場を逃げ出しましたが、今まで、自分が気づかぬまましてきたことを想像し愕然としてしまいました。自由奔放な女性人格が、主人格である家事担当人格に戻ったときの出来事であり、それまでもときどき体についていた青痣の原因に気づき始めた瞬間でした (本人の了承を得て掲載しています)


交代人格は、常に社会的な規範や基本人格(あるいは主人格、または他の交代人格)が望むようなやり方で行動するとは限りません。自分がDIDであると気づく前は、何やら身の回りで次々にちぐはぐな出来事が起きているような違和感を覚えるでしょうし、気がついた後には、自分の知らないところで、いつ何時、別の人格が何かをしでかしているのではないかという不安がつきまといます。

後の治療の項目で詳しくお話しますが、DIDの治療に関しては、今、目の前にいる人格だけではなく、常に他の人格が耳を傾けている可能性を考慮する必要があります。
DIDは、人格交代、解離性の健忘が起きるだけではなく、DIDに由来するさまざまな合併症状や問題行動を伴うことが大多数です。以下に一覧表を示しました。すべての症状や問題行動が、一時に一人のDIDの人にすべて現れるわけではありません。通常、一覧表の中の症状や問題行動のいくつかを併せもっていることがほとんどです。

DIDにしばしば見られる身体症状と問題となる行動
身体症状
不眠 頭痛 意識消失(あるいは意識がぼやける) 幻聴 幻視 気分変動 体重減少 恐怖 不安 知覚異常(痛覚消失、温覚・冷覚の異常) 嘔吐 吐気 動悸 めまい 過呼吸 てんかん性の反応 身体麻痺

問題行動
攻撃行動 薬物乱用 拒食 過食 強迫行為 自傷行為 自殺企図


このような症状は、DIDの主症状ではありませんが、QOLの向上を図ったり個別的な対症療法を施すことで、根幹の症状である解離状態に陥る頻度を相対的に減少させることつながります。

8.治療の一般原則
DIDの治療に関して、薬物による治療は補助的な手段です。精神療法(心理療法)が効果的だとされています。

【目標】
DIDの治療目標は、これまではバラバラになった複数の人格を1つの人格に統合することだとされてきました。しかし、たくさんの人格は、辛すぎる世の中を生き抜く上で必要だから生まれてきたものです。それらを抹消したり、無理やり1つにまとめようとすることは、かえって状態を悪化させる可能性もあります。このような考えから、今日では、人格を統合する方法をとらず、人格同士が互いに共存していけるようにすることを治療目標とする場合があります。


  
   DIDの治療目標

  1. 人格の統合

  2. 複数の人格の共存



治療目標にはこの2種類があり、通常治療を受ける人の状態や要望によってどちらかが選択されていくことになります。しかしながら、実際にはこの中間型の目標設定が多くなるのではないかと考えています。

私は、状況に合わせて、統合するのが自然な人格同士は統合してもらい、それが無理な部分に関しては共存を図るというように現実に沿って目標を立てるようにしています。

【薬物療法】
主に対症療法として使用されます。うつ状態がひどいときには抗うつ薬、不安が強いときには抗不安薬というように、症状に応じた薬を使用していきます。

たとえば、睡眠不足は当事者の体力を奪い、神経系、内分泌系、免疫系に影響を及ぼします。このような生理学的な変化は、ストレス耐性を下げ、より些細な刺激で解離が生じやすい状態を形成してしまいます。

適切な薬の使用は、このような二次的な症状の表出を防ぐことに役立ちます。ただし、DIDの人は薬物依存になりやすい傾向があるので、薬の使用に当たっては、治療者と本人の双方が十分に注意し、しっかりとした治療計画のもとに実施していくことが必要です。とくに、まとめ飲みが予想されるような場合をあらかじめ考慮せねばなりません。

【精神療法(心理療法)】
洞察指向的精神療法(例:精神分析的治療)と催眠療法の併用が有効であるとの報告があります。一部に、行動療法は罰による治療で虐待体験を思い出させるため、DIDには百害あって一利なしといった誤った情報が流れています。しかし、行動療法が罰による治療法というのはまったくの誤解です。

近年は、認知行動療法によるPTSDなどの外傷性の重篤な精神障害への優れた治療プログラムが開発されています。認知行動療法は、行動療法の治療手続きを複数組み込んだ治療パッケージであり内実は行動療法です。

この後は、1)DID治療の一般原則、2)DIDの行動療法の概要をご紹介することにします。

精神療法(心理療法)には様々な呼称や学派による違いがあり、一般の方々は非常に分かりづらいものになっています。しかしながら、一つ言えるのは、見た目こそ違え、よい治療者による精神療法(心理療法)は、カウンセリングであれ、精神分析であれ、行動療法であれ、症状改善の効果を生み出しているメカニズムは同一だということです。


1)DID治療の一般原則

a)信頼関係の樹立
DIDの人は、幼少期の虐待の被害体験をもっているため、人を信用することができないことが多く、治療関係を築くこともかなり難しいといえます。したがって、治療初期は、治療場面(面接室)での身体的・心理的・社会的な安全を保証し、信頼関係を築くことが第一の目標となります。

治療がうまくいかない原因の1つは、参加者が治療者を信頼しきれずに治療が中断してしまうことにあります。場合によっては治療そのものが開始できないことも少なくありません。治療者は治療者である以前に、自分が人として常に試されていることを肝に銘じるべきです。


DIDにしばしば見られる心理・行動的傾向

  1. 誰も助けてくれない、他人に気を許すと自分がやられるという強い気持ち

  2. 信頼関係や愛情関係を築くことへの強い欲求と恐れによる二重拘束

  3. 裏切 られたり見放されたりする不5安からつい相手を試してしまう

  4. 虐待体験にまつわる自分の気持ち理解してもらいたいがそれを否定されるのが怖い

  5. 他人に理解してもらえない体験の積み重なりに由来する不全感

  6. いつも誰かに見られている(監視されている)ように感じる不 安



治療者やサポーターは、上表のようなDID独特の心理・行動的傾向を熟知しておく必要があります。こうした全人的な理解を足場として、さらに治療者には、懐深く彼らを包み込む支持的な姿勢と、しかし自他の境界は明瞭に示す毅然とした姿勢という微妙なバランス感覚が求められているのです。

DIDの人は、人をなかなか信用できない一方で、一度信用すると極端に依存傾向が高まり、自分のすべてを受け入れることを求めたり、治療者を独占しようとしたり、それが叶わないと反発したり、巧みな対人操作(本人は意識していない)で治療者を含めた周囲の人間を混乱させてしまうことがあります。

あるDIDの女性が、私に語ってくれた次の言葉は印象的です。

「風が吹いても何が起きても揺れない、大木のような不動の人でいてほしい」
(本人の了承を得て掲載しています)

DID治療に極意というものはないと思いますが、この女性の語ってくれた言葉は、DIDを抱える人の心理と、治療者あるいは日常のサポーターに求められているものの本質を見事に言い尽くしているように思えます。

ただし、寄せくる風を弾き飛ばしてしまうような“硬い大木”は好ましくありません。吹きつける風を受け流すような包み込んでしまうような柔らかな枝葉、しかし根はしっかりと地に張りついて動かない柳のような大木が望ましいでしょう。

b) 治療構造
治療構造は、参加者と治療者の双方にとってとても大切です。よく整備された堅牢な治療構造は、「依存してもらわないと回復が望めないが、依存しすぎてしまうと過去のうまくいかなかった人間関係を再演させ、挫折感や無力感、症状の固定化を増してしまう」という治療上の大きなジレンマを緩和してくれます。

DIDの人たちは、他者との程よい距離間隔をキープすることが非常に不得手です。距離を保つのは、治療者の当面の重要課題の1つとなります。この距離間隔を上手に保てるかどうかで、その後の治療の行方が左右されると言っても過言ではありません。

参加者が一方的に距離を縮めてくる、あるいは遠ざかると考えるのは、治療者の責任転嫁です。距離を保つスキルが十分でないことがわかっているのですから、うまく距離を保てないのは、治療者のさじ加減によることを認識すべきです。距離を保てないなら保つ方法を教えていくことが治療教育です。

こうした困難な治療状況の中で、治療開始に先立つ「治療契約」は、参加者と治療者の双方を共に守ってくれる重要な枠組みとして機能します。


治療契約書を通じ、参加者は、

  1. 自分や他人を傷つけないこと

  2. 治療者、来談者(人格)、その他すべての人格が民主的に話し合い協力して治療や日々の生活に臨むこと

  3. 治療者を含む他者の私生活を尊重し他者の生活領域に入り込まないこと

  4. この約束を守る限り治療者は治療の最大の努力を継続するが、守られない場合は治療を打ち切ることができること
などを約束し、治療に訪れている人以外の人格も、この契約書にサインをすることを求められることが一般的です。



私(臨床心理士)の場合は、上の項目に、さらに「必要な場合は医師の診察を受けて薬を処方してもらい、医師との約束を守って服薬する」という条項を付け加えて使用しています。これは、参加者の中にうつ状態などが激しく、薬による対処が必要なのにもかかわらず、それを拒絶し本命の解離治療が滞ってしまう人が見受けられるからです。

ただし、DIDの人は薬物への依存傾向が高いため、長期服薬やまとめ飲みの弊害を避けるために、医師以外の者(カウンセラー、臨床心理士 etc.)などが治療を担当する場合は、信頼できる医師と十分な話し合いの場と連携をもつことが肝要です。

c)本格的な治療の開始
こうして本格的な治療が開始されます。本格的な治療の初期目標は、システム(各人格間の関係)の把握と安定を図ることに主眼が置かれますが、個々の人格が各々の心的外傷をもっていることが多いので、それぞれの人格ごとの外傷治療が必要になります。

また、その心的外傷は、各人格間で共有されているものではありませんから、すべての人格とその関係を早期に把握するように努めないと、ある日突然、参加者が危険にさらされる可能性があります。

とくに、治療に抵抗感を示す非協力的な人格が存在する場合は、その人格となるべく早期に接触をもつか、交流のある人格を介して対話の場がもてるよう努力していくべきです。どの人格も孤立させてはいけません。どの人格にも平等に接していくことが大切です。

d)一般原則のまとめ
以下に、治療に関する一般原則を一覧表にして示します。R.P.Klufe(1991)の記述を改変・加筆して一般の読者用にまとめたものです。原文とは、ほとんど記述が異なっているかもしれません。私の主観が強く反映されていることをご了承の上お読みください。


DIDの効果的な治療の原則

  1. 解離状態は、虐待などの外傷体験に基づいた激しい苦痛が現在に再現されることによって生じます。ゆえに、DIDを効果的に治療していくためには、心身の安全を保証する治療の枠組みと、堅牢で首尾一貫した参加者−治療者の役割と距離関係を提供していくことが必要です。

  2. 解離状態は、その人が起こしているものでありながら自己コントロール感はありません。解離は、過去に生み出した苦肉の策を、事情が異なる現在でも不便さを感じながら忍耐強く使い続けることを強いられている状態と言えます。しかし、当事者が、それによってしか苦痛に満ちた幼少期を精神崩壊をきたさずに生き延びることができなかったことを忘れてはなりません。したがって、DID治療の焦点は、自分を飲み込む衝動の克服や、治療へ参加者が積極的に関われるようになるという主体性的な変化そのものに求められるべきです。

  3. DIDは、その人のコントロールを超えている障害です。この障害を抱える人は、外傷を負わされることを好まず、症状が自制できないことにしばしば気づいています。したがって、障害克服には、治療者と参加者との強い同盟関係が必要であり、この同9. 盟を強める努力は、治療期間中一貫して約束されるべきです。

  4. 解離状態(人格の交代)は、封印された外傷体験の証拠であり、押し殺された感情の表れです。ゆえに、記憶の底に隠されているものの正体が解き明かされ、どんな感情が付随しているのかが思いだされる必要があります。

  5. 解離状態は、ある人格が受け入れることのできなかった感情、願望、衝動が、それを許容できる別の人格によって実現されたものです。したがって治療とは、協調、強力、共感、あるいは相互の関係性を重視し、たくさんの人格に分かれねばならない理由をなくし、各人格の葛藤を弱めるようにすることです。

  6. 解離状態は、催眠術によって起こせる現象と類似点の多い現象です。この事実から、治療者のコミュニケーションは、明快で直接的であるべきです。相手を混乱させれるようなコミュにケーションが入り込む余地はありません。

  7. 解離状態が生じるのは、その人にとっての重要な人間の首尾一貫しない言動が関係しています。言動に矛盾があるので、その人は人格を交代させて、まったく相容れない状況と付き合っていく必要があるのです。したがって治療者は、すべての交代人格に対して公平に接するべきで、えこひいきを避け、それぞれの人格状態に対して治療者自身の行動をあからさまに変えるべきではありません。すべての交代人格に対する治療者の一貫性は、参加者の解離性の自己防衛に対するもっとも強力な治療的試みなのです。

  8. 解離状態は、自分の安全、自尊心、あるいは将来に対する展望を損15. なわせる原因となります。ゆえに治療者は、参加者の意欲を回復させたり、現実に即した希望を徹底して教え気づいてもらう必要があります。

  9. 解離状態は、自分を圧倒する強制的で脅迫的な力の体験に由来します。そのために、治療のペースというものが重要になります。ありがちな失敗は、治療で扱う材料が、その時点では参加者の許容範囲を超えている場合に生じます。治療者が性急に事を進めようとする場合とくに多くなります。次の「18. 1/3のルール」を守ることが賢い方法です。

    面接の最初の1/3で何材料に入る。
    真中の1/3でその処理を試みる。
    最後の1/3で参加者の安定を図る。

    この企図がうまくいかず、参加者が感情的に混乱して面接場所から立ち去らないのであれば、機が熟するまではその材料を扱ってはいけません。外傷体験を想起することが、再び外傷を与えることは許されないからです。

  10. 解離症状は、他人のいい加減で無責任な態度が原因で生じます。ゆえに治療者は、すべての人格に、治療者が信頼に値するという信用をもたせ、それを基礎として、筋道に沿った総体的な信頼とは何かを気づいてもらう必要があります。

  11. 解離状態は、感情を押さえ込まれて育てられたことによって生じることがあります。治療者が中立的立場をとることが、拒絶や気にかけていないことと誤解されることが予想できるので、感情表出を促すような温かで受容的な態度をとることが大切です。

  12. 参加者は、たくさんの認知の歪み(思考の偏り)をもっています。治療者は、筋道を立てながらこれを訂正し、前進するための道標としなければなりません。

R.P.Klufe(1991). Multiple personality disorder: In Review of Psychiatory, vol 10, A.Tasman & S.M.Goldfinger, editors, p.161. American Psychiatric Press, Washington, 1991.より改変・加筆して掲載。

9.解離性同一性障害の行動療法

DIDには弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy)が有効がといわれています。ここに紹介する方法は、私が試行錯誤してきた介入※1(治療)手順です。弁証法的行動療法との共通項もありますが、異なるところも多くなっています。

DIDの治療経験者との交流もほとんどもっておりませんので、このページをお読みになった当事者や関係者の方から、ご指導やご助言をいただければ幸いに思っております。また、情報交換や学習会などを共に行っていく機会を提供していただければさらに幸いです。

以下に、レベル別に手続きを記述していきます。

介入の「段階」とはせずに「レベル(水準)」と表したのは、あるレベルで行われることが、次のレベルで取り組むことへの基礎作りの役割を果たしているからです。参加者がいきなり難題にぶつかって挫折しないように、地力を蓄えてから先に進めるように工夫されています。

この介入計画は、多層ベースラインモデルに基づいていますが、ベースライン(症状等の生起頻度や継続時間を観察する期間)を設けて効果の有無を判断しようとしているのではなく、各々の手続きの導入時期をずらすことで、次のよりシビアな介入手続きへの参加者の準備性を形成することを意図しています。

DIDは非常に繊細な障害です。たとえば、原理的にはエクスポージャーが有効だと分かっていても、いきなりトラウマに曝露するのはあまりに危険です(もっとも記憶を特定できませんが)。最終的な課題に到達するまでに、ゆっくりと時間をかけながら、介入に耐えうる基礎を作り上げていく必要があります。多層ベースラインに基づく行動療法は、徐々に体力をつけながら少しずつ傾斜が急になる山を登っていこうという計画です。


※1 介入・・・問題となる行動や症状を改善するために取り組むこと。行動療法や応用行動分析では、治療という用語の代わりに介入の語を使用する。




多層ベースラインモデルに基づくDIDの行動療法

 レベル1  

(目標)

  1. 信頼関係の形成
  2. 治療ルールの取り決め
  3. 留意点

 

1.信頼関係の形成

参加者の相談行動(来談・発言)を徹底的に強化することに努めます。ここでの強化には3つの役割があります。1つは文字通り参加者の相談行動を強化すること(オペラント強化)。2つめは相談に係る不安や恐れなど治療者によって誘発される不適切な条件性の情動反応を消去すること(レスポンデント消去)。3つめは快適で安定したな感情を生起しやすくすること(レスポンデント強化)です。

これは今後の治療関係のベース(信頼関係)となるものであり、治療過程を通じて常に最優先されます。



2.治療ルールの取り決め

堅牢な治療構造は、参加者と治療者双方を身体的・精神的・社会的に守り、対人距離をうまく保つことが不得手な参加者が対人関係を学ぶもっとも基本的な見本となります。

ここで言う治療構造は、面接場所、時間、治療法、費用などの一般的な治療構造に留まりません。参加者−治療者間のルール※2がとくに重視されます。治療構造は、ようするに両者間の一定の関係性を保持するための枠であり、これは物理的構造に依存するものではなく、むしろ参加者と治療者との機能的関係性に負うところが大きいものです。

※2  ルール・・・〜のときに、〜をすると、〜が起きる(〜になる)、という行動と環境変化の関係性を言葉で表したもの。スポーツや社会でのルールとは意味・用法が異なる。


両者の合意(治療契約)に上に立った包み込むような、しかし一定の境界は守る治療者のゆるぎない態度が、ともすれば起こりがちな参加者の治療からの離脱や、治療者への過剰な依存、あるいはそれを受け入れられない葛藤から生じる過剰な行動化※3を防いでくれます。治療者は、機会あるごとに言語的・非言語的に参加者に望ましいルールを伝えていくことになります。

※3  行動化・・・アクティング・アウトとも言われる。問題となる行動(自傷 etc.)が実際に起きること。



3. 留意点

DIDを抱える人は、その原因から対人不信が強く、あちこちの病院やクリニックで不信感を増長せられるような経験をしていることも少なくありません。信頼の基礎が築けないうちは、治療者のどのような言葉も、どんなに効果が期待できる治療手法でも、参加者がそれを受け入れてくれることはないと考えるほうがよいでしょう。

治療から離脱するケースが多いのは、性急に事を進めようとするばかりに、このような基礎的な関係性が軽視されていることが大きな原因の1つです。

治療からの離脱、あるいは治療機関を転々とすることは、DIDを抱える人の大きな不利益になります。まず、参加者が安心して、さらには希望が持てるように治療者が行動を示し、継続的な治療を行える土台を作ることに何よりも力を尽くさねばなりません。

治療関係の構築には治療契約が含まれます。治療契約は口頭の場合と書面による場合とがありますが、DID治療では書類形式が好ましいと判断しています。ここでの契約とは、通常の治療契約に加え、行動療法でいう「行動契約法」を実施することを意味しています。

行動契約を書面上で交わすことによって、参加者にも治療者にも守るべきルールが明確に示されます。参加者には治療が協働行為であるという自覚が生まれ、後に言った言わないでもめる治療時間の浪費を防ぐことができます。

行動契約を行うには理由がもう1つあります。それは、自傷、自殺、犯罪、薬物依存などの参加者が自他を傷つける行為を当初から防止する働きです。DIDでは、主症状であるDID症状以外にも多くの問題行動を伴うことが大変多くなっています。とくに参加者の身の安全を確保する努力は、治療開始に当たって最優先されるべき課題の1つといえます。

行動契約は機会あるごとに再確認され、必要があれば参加者と治療者の合意の下で改訂されます。このような努力と、危険から身を守る対処技能の修得は、治療過程を通じて行われる必要があります。

なお、行動契約には来談した人格だけではなく、他の交代人格も署名する必要があります。なるべく多くの人格に署名してもらうことが、以後の治療を円滑に進めることにつながります。




 レベル2  

(目標)

  1. 日常場面に関連した認知修正
  2. 感情を徐々に表現できるようにする
  3. 障害と人間行動に関する知識の習得
  4. 留意点

 

1.日常場面に関連した認知の修正

十分な信頼関係が形成されて初めて、参加者が日常生活で遭遇する“表面的な”認知の歪みを扱えるようになります。ここでは、過去のトラウマ体験に関連の薄い認知の歪みを選択的に取り扱うようにします。より適応的なルール(認知)を獲得することで、日常生活の負担が軽くなり解離しやすい状態に陥りにくくなります。



2.感情を徐々に表現できるようにする

どの交代人格も、すべて参加者の一部であり全体でもあります。すべての人格に治療者が平等に接していくことで、参加者(あるいは他の交代人格)は解離する必要がないことを実感できるようになっていきます。それまで不満や怒りをあらわにすることができなかった基本人格が、ほんの少しでも感情を表現して治療者に伝えることができるようになれば、そのぶん、たとえば攻撃的な怒り担当人格に交代する必要性は減少するからです。ここでの介入目標は、代替行動を強化することによって、より適応的な刺激性制御を確立させることです。



3.障害と人間行動に関する知識の習得

障害に関する正しい理解は、DIDを抱える人のストレス軽減と自己理解に役立ちます。たとえば、面接中にポップアップ(いくつもの人格状態が激しく切り替わる現象)があること、この現象が起きても決して気が変になったりはしないことを知っておくだけで気分はだいぶ楽になります。また、なぜ、どのように解離が起きるのかを知ることは、参加者がDIDとどのように付き合い、どのように対応していけばよいか、この障害と正面から向き合っていくことにつながります。


正しい知識の習得には行動分析学に基づく行動変容についての知識を学習することが含まれます。他者および自分の行動を分析する力、行動随伴性の管理を計画する力、現実的な目標を定める力を身につけ、これを実践に移していくことが自己管理と円滑な対人関係を実現することにつながっていきます。



4.留意点

DID形成の原因となった過去のトラウマ的な記憶をいたずらに掘り起こすことはタブーです。しかし、治療者が注意を払っていても、何らかのきっかけで過去のトラウマ記憶が再燃することがあります。このような場合には、一時的に不安定さが増しますが、仮に人格交代が起きて、治療者に反抗的あるいは攻撃的になったとしても、治療者は平常の態度を崩してはなりません。普段と同じように、穏やかに懐深く、しかし一線は崩さない毅然とした態度を一貫させるべきです。

参加者の気持ち、あるいは人格の変化に臨機応変に応じることは大切ですが、参加者の“揺れ”を受容するのではなく“共振”してしまうと、参加者の精神的興奮が静まらなくなるばかりか、これまでに築いた信頼関係を不意にしてしまいます。どのような状態であれ、参加者は治療者をよく見ています。安定感のない治療者は参加者に不安と不信感を募らせるだけです。

とくにDIDの場合は、他の交代人格が、相談している人格(参加者)と治療者のやり取りを傍聴していることがあります。ある人格には高慢な説教口調で話し、別の人格には猫なで声で話しかける治療者は、DIDを抱える人に限らず誰からも信頼されないでしょう。




レベル3   

(目標)

  1. QOLの向上・問題行動への対処
  2. 遊び課題を通じての感情の解放
  3. トラウマ体験に由来する認知修正の部分的導入
  4. 留意点


1.QOLの向上と問題行動への対処

QOL(生活の質)の改善は非常に大切です。職場や家庭環境がストレスフルである場合、それだけで解離症状が出現します。解離を繰り返すことは、より容易に解離状態が生じるようトレーニングしているようなものです。

ストレスフルな状況刺激が解離の引き金になっているときは、環境を調整することで解離の生起頻度を減少させることができます。このような意味でのQOLの改善は、自宅や職場での人間関係の調整から、場合によっては職場の変更や引越しなどまでを含める非常に幅の広いものです。

次に上げられるのは、睡眠や食事などの生活リズムの調整です。健康な人であっても、3日も睡眠をとることができければ精神状態はおかしくなります。日中に太陽の光を浴びることは体内リズムの調節に役立ちます。また、十分な栄養を摂取することで、精神活動の基礎である脳を健康な状態に保つことができます。就寝時間や食事内容を見直すことで身体的な安定を図る基礎作りをしていきます。

精神症状は身体と切りはなれて存在するものではなく、身体的基礎のうえに成り立っていることを忘れてはなりません。

また、QOLを台無しにする問題行動への対処も非常に大切です。取り組むべき課題には、自傷・自殺行動、薬物依存、金銭管理、不特定多数の相手との性行動、摂食障害、その他の犯罪行為などへの対処が挙げられます。心身に害を及ぼす危険性の高いものから優先されますが、中核は衝動のコントロール技能です。


2.遊び課題を通じての感情の解放

DIDを抱える人は遊び下手です。原因は、幼少期に受けた待遇を鑑みれば容易に推測できます。遊ぶこと、楽しむこと、自由に振舞うことに対して不安や恐怖、罪業感を抱く人もいます。

多くの場合、彼らが心置きなく楽しむには、「子ども人格」へスイッチングする必要があります。また“奔放な人格”が自由気ままさを一手に引き受けていることもあります。したがって、参加者が前記の理由から気持ちを開放して遊べない場合、遊びに興じることで生じる不安や恐れを、トレーニングルームや面接室での遊び課題を通じて消去していく必要があります。

課題の選択にとくに制限はありませんが、子ども人格を招来してしまわない程度のものからはじめ、徐々に遊び的な要素を深めていくとよいでしょう。子ども人格にスイッチングしてしまうと不安反応の消去が成立しなくなるからです。

ここでの体験は、次のレベルに登場する部分曝露課題での重要な礎になります。遊び訓練で生じる快感情は、部分曝露で生じる不快感情とは両立しないからです。つまり、心地よい反応が生じやすくなることで、不快感情が生じにくくなります。


3.トラウマ体験に由来する認知修正の部分的導入

この認レベルでは、トラウマ体験に関わる歪みを扱いはじめます。次のレベルでの部分曝露へのストレス耐性を身につけることと、トラウマに基づく認知を扱うことでの間接的な曝露効果をもたらすことの2つの意義があります。ただし、少ない数、軽めの記憶から取り扱うことを心がけます。

使用される認知修正の手続きは一般的な認知修正と変わりません。コラム法などを用いて物事の多面性を見出す訓練から始まり、自己否定的で破滅的な自動思考を中立的で非破壊的な合理思考へ転換していきます。

人格交代による“空白の時間”をそれぞれの人格が共有できるよう「活動記録表」を用いることも有効です。自己観察は、通常は思い出さない、したがって気にも留めない空白の時間について考えをめぐらせるよい機会を提供してくれます。また、この作業は次のレベル4での諸人格の図式化作業のベースにもなっています。


4.留意点

このレベルでの介入は、“単なる面接室での対話”“表面的な認知修正”から1歩深まった水準に移行したものになっていることがお分かりいただけると思います。レベル2までは、信頼関係の構築をメインに、弊害の少ない、いわば“積極的な消極策”を心がけていたわけですが、ここにきて介入手続きは、参加者の現実の生活圏へ、そして参加者の内面へと一気に拡大・深化しています。

当然のことながら、このレベルでの介入の成否は、それまでの参加者−治療者の関係性がどこまで熟しているかにかかっています。時期尚早と判断されるのであれば、努めてこのレベルに突入するべきではありません。

とくに遊び課題では、治療者はある意味、参加者の親役を演じる必要性に迫られます。しかし、現実には治療者と参加者という厳然とした立場が存在するのであり、治療者はよき親をリアルに演じながら、なおかつ一線は越えないというきわめてバランス感覚のいる作業を求められます。これができないのであれば、遊び課題は参加者に過剰な依存を呼び起こすだけの結果になってしまいます。これも自信がもてないうちは手をつけるべきではありません。

なお、遊び課題は子どもがする本物の遊びである必要はありません。庭に咲く季節の花を眺めながら談笑してもかまわないのです。参加者が、今自分のしていることが治療面接だということを忘れて、そのひと時に気持ちを開放して過ごせることが何よりも大切です。




レベル4   

(目標)

  1. 部分暴露によるストレスの低減
  2. 諸人格の位置関係と役割の図式化
  3. 留意点


1.部分暴露によるストレスの低減

レベル3をこなしていくと、様々な条件性の不適応情動反応の消去が進み、参加者は様々な過去の記憶を断片的に思いだすようになってきます。症状の軽いケースでははじめから思いだせることもありますが、時期的にはやはりレベル4以降に取り組むほうが、参加者の負担が少なく効果も上がるように感じています。

DIDは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と同じく外傷性精神障害の1つですが、ここでの作業をPTSDにおける長時間曝露法(PE:Prolonged Exposure)と同じものと考えてはいけません。

PTSDにおけるPEは、段階的ではあるにしても核心的なトラウマ記憶に対峙すること求められますが、ここでの部分曝露は、核心的な“トラウマ記憶から溶け出した周辺記憶”に対して実行されます。つまり、PTSDにおける長時間曝露がテーブルの上においた氷を直接手で触ることなら、DIDにおける部分曝露は、その氷から溶け出して流れ出る“水”に触れることなのです。

水の一部に触れているうちに、次々に新しい水(記憶)が流れ出てきます。その新しく流れ出てきた記憶に順番に触れていきます。氷を手のひらで溶かす方法もあれば、溶け出すのを待って、すべての水に触る方法もあるということになります。

したがって、参加者が特異的に反応(解離症状を起こす)するトラウマ記憶が同定されているとしても、一切その記憶への曝露は行いません。参加者が希望しても、まだ機が満ちていないことをよく説明するべきです。

曝露によって情動的には落ち着いてきても、根強く残る認知の歪みが参加者の活動を様々な場所で制限しています。曝露そのものが認知の修正につながることが多いものですが、あらためて言葉を通じて合理的な認知(適応的なルール)を整理していくことは大切です。


2.諸人格の位置関係と役割の図式化

治療者は介入開始からすべての人格状態を把握することに努めていますが、協働作業としてはレベル3以降、トラウマに関連した認知修正を扱えるようになってから実施していくのがよいでしょう。

作業に当たっては紙とペンを用いて図式化していくことが大切です。参加者と治療者が協力して、各人格間の友好度や力関係を検討し、それぞれの人格が日常生活で果たす役割を紙面上に配置していきます。こうした作業を通じて、今まで漠然としていた各人格間の相互作用が明確になり、諸人格の新密度がクラスタリング(考えや感じ方の近い人格同士がまとまること)がなされていきます。

この作業によって、特定の人格状態を治療の外に置き去りにしてしまう過ちを防げる他、日常の出来事や過去経験に対する各々の人格の考え方や価値判断の違いを視覚的に捉えることができます。また、それらの異なった考え方や感じ方の違いを取り上げることで、各人格間のコンセンサスと相互理解を深める貴重なツールとなります。

こうした定式化は紙面上のものではありますが、諸人格の統合や歩み寄りの進行を視覚的にフィードバックしてくれるものであり、参加者の目標設定や動機づけに大変役に立つものです。



3.留意点

DID治療の目標には、大きく分けて人格の統合と共存の2つがありますが、この時期になるとおぼろげながら、どちらがより好ましいかおおよその見当がつくようになってきます。

多くの場合、すでに融合し始めたり、友好関係が増している人格が認められるはずです。2つの目標のどちらかを無理に選択する必要はありません。問題を抱え続けている人格には個別的にケアを施していくなど、新たにパイプ役となってくれた人格と協働して、各人格間の風通しをよくし、相互の共通コンセンサスを作り上げていくことが大切です。

それぞれの交代人格は基本的に誰も孤独です。公平に接するようにし、特定の人格を仲間はずれにさせてはいけません。交代人格はどれも参加者の部分であり全体でもあります。最終目標が統合にせよ共存にせよ、脱落する人格があるところに目標の達成はありません。




 レベル5  

(目標)

  1. 認知修正の徹底


 

1.認知修正の徹底

レベル5では、トラウマ記憶に由来する認知の歪みを集中的に修正していきます。この認知修正を通じての間接(部分)的曝露の効果と、認知修正技能を習得によるストレス対処技能の向上を意図していることはレベル3に同じです。

ただし、レベル5では、より核心的な認知の歪みを集中的に扱うことにより、次のレベル6での中核的なトラウマ体験への曝露に耐えうる状態を形成することが狙いです。




レベル6 

(目標)

  1. 中核的なトラウマ記憶を過去の1コマの映像に変換する
  2. 留意点 

 

1.中核的なトラウマ記憶を過去の1コマの映像に変換する

解離を生じさせる原因となった中核的なトラウマ記憶を思い出すことは、参加者にとってもっとも必要なことであるとともに、最大の苦痛をもたらすものでもあります。参加者の苦痛を最小限に抑えるために曝露は段階的に行います。

DIDにおける曝露は、PTSDの長時間曝露の修正手順を用います。これはオーバーエンゲージメント※3を予防するためと、参加者の治療への取り組みを容易にするためです。大まかな手順は以下の通りです。

音読法 → 開眼・過去陳述形 → 閉眼・現在陳述形 (組み合わせは他にもあります)

※3 オーバーエンゲージメント・・・トラウマ記憶に圧倒されて解離やフラッシュバックなどが生じてしまうこと。 



2.留意点

治療者は、アンダー・エンゲージメント※4を避けるために、日常でのトラウマ記憶の再燃とは状況が異なること(安全の保証)、自分の感情や感覚に焦点を当てること(再教示)を分かってもらうよう促します。記憶想起の流れを中断させないように、教示は短く簡潔に(例:何が見えていますか? etc.)、しかし強化的な働きかけ(例:その調子です etc.)を心がけねばなりません。

※4 アンダーエンゲージメント・・・回避にってトラウマ記憶の想起が十分に行われない状態。


治療者は、5分おきに主観的不安度※5がどのように変化しているか訊ねます。これには、不安の低下を言語的にフィードバックする働きがあり、参加者を落ち着かせ、うまくいっているという自己効力感を高め、治療者には曝露過程がどのように進んでいるかを確認できる利点があります。

※5 主観的不安度・・・まったく不安なしを0、今にもパニックになりそうなほど不安な状態を100として、0〜100の間で、不安(恐怖)度を自己評定したもの。



レベル6は、対DID治療としては最終のレベルになります。しかしながら、このレベルに到達するまでには非常に長い時間がかかります。そして何よりも、このレベルに辿り着くには、レベル1〜5までに学んだ様々な対処スキルを、参加者がしっかりと身につけていることがもっとも必要とされます。

行動療法でもっとも望まれる効用の1つは、治療者の施術にあるのではなく、参加者自らが行動的手法(自他の行動分析、ストレス対処技能)を学び、自らが成長していくところ(エンパワメント)にあるからです。

レベル6を通じて、参加者は過去の記憶に翻弄されることはなくなり、自己効力感が高まります。そして、生々しく迫ってきた自分を圧倒するような過去の記憶は、アルバムの中の1コマに静かに姿を変えていくことになります。嫌な出来事であったことを参加者は素直に認めることができますが、それを思い出すことによってひどく混乱することはなくなります。




 レベル7


(目標)

  1. アフターケア
     

1.アフターケア

解離症状が緩和あるいは消失したとしても、それですべて終わったというわけではありません。解離症状が起きなくなっても、様々な種類の不安症状や怖れが残存しているのが普通だからです。

注意深くアフターフォローをしながら、カップルセラピーや主張訓練など、一般的な行動療法による支援が必要になってくるのも段階といえます。

参加者それぞれのニーズ、生活のスタイルに合わせてより快適な日常生活が送れるようにサポートしていくことが望まれます。